肺移植について
肺移植とは
進行性の肺疾患で他に有効な治療法の無い方が、自分の病気の肺と元気な肺とを入れ替える手術です。患者さんの病状などに合わせ、肺移植には以下のような方法があります。
脳死肺移植
脳死状態になられた方の臓器提供による肺移植
残念ながら脳死状態(回復見込みのない脳の死)になられた方の、尊い遺志による臓器提供に基づき行なわれます。世界的には最も多く行なわれている肺移植方法になります。
ドナー(提供者)の片肺、または両肺を、移植を受ける方(レシピエント)の片方または両方の肺と入れ替える方法です。
生体肺移植
近親者から提供された肺の一部と入れ替える移植
二人の近親者から左右いずれかの肺の一部(下葉)を提供していただき、レシピエントの両方の肺と入れ替える方法です。
日本では、脳死ドナーからの臓器提供だけでは、移植を待つすべての患者さんに臓器が行き渡らない現状があります。脳死肺移植を受けるまでの生存が難しいと判断された患者さんに、緊急避難的措置として行なわれています。
この移植方法には、健康な方から肺を提供していただくという倫理的な問題や、ドナー(提供者)の方は肺活量が約20%低下するなど、術後の生活面における問題もあります。
近親者とは、20歳以上の三親等以内の親族あるいは配偶者を指し、具体的には、夫あるいは妻、両親あるいは子供、兄弟、姉妹、祖父母、孫、叔父、叔母。
再移植
移植した肺を摘出し新しい肺と入れ替えるという再移植
肺移植後長期生存者の中には「慢性拒絶反応」を発症される方がいらっしゃいます。
進行が止まらないと、再び呼吸困難に陥ってしまうやっかいな病態ですが、現状、慢性拒絶反応には有効な薬物治療がなく、世界的にも肺移植後遠隔期の死亡原因のトップになっています。
このような場合には、移植した肺を摘出し、新しい肺と入れ替える再移植という移植ができます。患者さんの中には過去3回の肺移植を受け、その後も元気に生活されている方もおられます。今まで克服することが難しかった、重症慢性拒絶反応に対しても新たな治療の可能性が広がっています。
小児肺移植
1歳から4歳までの小さな子供たちも助かる移植
脳死肺移植では、体格がマッチした小児脳死ドナーから移植を行ないますので、1歳児など小さなお子さんも移植できます。生体肺移植では、お父さんお母さんから肺の一部をいただき移植を行ないますが、学童期の子供にはぴったりのサイズとなります。しかしそれよりも小さな子供にとっては、たとえ大人の肺の一部でも大きすぎて、胸に収まりきらないといった問題があります。これは大問題で移植はできません。
それを解決してくれたのが、世界で初めての成功となった中葉移植や区域移植です。通常の生体移植では下葉と呼ばれる部分を移植するのですが、中葉の容積は下葉の半分なので、このもっとも小さな肺葉である中葉を移植する中葉移植、そして下葉を区域という単位に分割して両肺として移植する分割区域移植、これらの新しい手術方法で、1歳から4歳までの小さな子供たちが助かるようになりました!
しかし、これらの特殊な移植方法は高度な技術が必要なので、必ず経験豊富な専門家にご相談されることをお勧めします。
自家肺移植
肺がんに対する特殊な移植
これは肺がんの患者さんを対象とした新しい特殊な移植。
従来の外科治療では全摘出が必要であった肺を、肺保存という肺移植の技術を応用し、体外へいったん取り出し、がんに侵されていない部分を切り分け、肺を体内へ戻す方法です。
2010年に世界に先駆けて日本でこの移植が行なわれ、現在では”Oto Procedure (大藤法)”と呼ばれています。この治療法では、肺全摘出もやむなしと診断された患者さんや、手術不可能と言われたStage IIIbの患者さんに手術の可能性を示す一方法です。
肺の切除を一部にとどめるため、術後の肺機能低下をおさえ、患者さんの日常生活を向上させる新たな治療法として取り入れられています。
ベトナムでの小児肺移植 日越合同チーム